新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
聞き耳ずきん(宝の呪物)
あったてんがの。
貧乏なじさがいたと。
じさがお宮にお参りして
「おら神様に何か上げたいと思うろも、なんもあげらんねえ」
とようておまいりしたと。
そのうちにトロトロと眠ってしもうたと。
夢の中で神様が
「おまえの貧乏なことは、みんな知っている。そんげにきいつかわんたっていい。おまえに聞き耳ずきんと言うものをくれる。これをかぶれば鳥が何いってるか分かるすけ、これを持って行け」
とようたと。
そうしてじさが目を覚ましてみたら、そばに赤いずきんがあったと。じさは
「これが聞き耳ずきんだ。神様がおれに授けてくれたのだ」
とようて、喜んでそれをほどこ(懐)に入れて帰ったと。
途中に大きい木の下で休んでいたと。
そうしると、カラスが一羽フワフワとたってきてその木に止まったと。
今度は西の方からカラスが一羽ふわふわとたってきたと。
じさはこんげのときこのずきんかぶってみようとずきんかぶったと。
ほしたら、二羽のカラスが話していたと。
一羽のカラスが
「おい、何か珍しいことはないか」
とようと、もう一羽が
「別に珍しいこともないが、浜ばたのお嬢さんが病気で死ぬか生きるかとようている」
とようと、初めのカラスが
「そうか、なんでまたそんげな病気になった」
と聞いたと。
「それがつぼどこの松の木の下でヘビがカエルをくわえている。そのヘビとカエルを取ってやれば、お嬢さんの命は助かる。それが人間には分からんだんが、気の毒だ」
とようたと。じさは
「こらあいいこと聞いた。おれがいって聞かせてやろう」
と浜ばたの村へ出かけていったと。庄屋のうちの前で「八卦見(はっけみ=占い)、八卦見」
とようたと。
そうしたら、庄屋のだんな様が
「八卦見が来たが、見てもらえ」
と中へよんだと。
じさは中に入って
「何の八卦を見ましょうか」
とようと、だんな様が
「うちの娘が病気になって、どこの医者にかかってもなおらん。八卦置いてみてくれ」
と頼んだと。
じさがお嬢さんの寝ている寝間の枕元にいって、八卦置いてみたと。じさは
「だんな様のつぼどこの松の木の下にヘビがカエルをくわえている。それを放してやれば、お嬢さんの病気はすぐなおる」
とようたと。
だんな様が若いショよばって、松の木の下掘らしたと。
ほうしたらヘビがカエルくわえていたんだんが、すぐ放してくれたと。
お嬢さんの病気がすぐなおって、じさはお礼の銭いっぺえもろうたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<宝の呪物>をテーマとしたお話です。