新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
アブの命(産神問答)
あったてんがの。
村の鎮守様のお宮に、大工が泊まっていたてんがの。
夜中になったれば、シャンシャンと馬鈴(ばれい)の音がして目が覚めたと。
「はて、こんげの夜中に何だろう」
と思うていたら、お宮の前にきて声をかけたてんがの。
「鎮守様、今夜子どもが生まれるすけ、運を付けに行こう」
そうようたと。ほうしると、鎮守様は
「おらどこは、今夜お客がとれたすけ、いがんね。よろしく頼む」
とようたと。
迎えにきた神様は、また馬に乗っていがしたと。
いいかげんたったら、神様が戻ってきて、
「めでたく男の子が生まれた」
とようたと。鎮守様が
「なじの(どんな)運にしたい」
とようたら、
「それが二十(はたち)になると、アブの命とようことにしてきた」
と神様がようたと。
「商売はなんだ」
と聞くと、
「大工だ」
といわしてその神様はいがしたと。
それから、二十年たって、その子が大工になって、家建てるとって(とて)、ノミを持って仕事していたてんがの。
アブが一匹プーンとたってきて、その男ののどへ食いついたと。
大工はたまげてノミを持っていた手で払い除けようとして、ノミがのどに刺さって死んでしまうたと。
二十のアブの命で命とられてしもうたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<産神問答>をテーマとしたお話です。