新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
さるの生肝(動物の闘争)
あったてんがの。
竜宮城の乙姫様が病気にならしたてんがの。
医者にかかるろも、いっこうに治らないと。
こんだ神様からみてもろうたら、
「サルの生肝(いききも)を薬に食えばいい」
とおっしゃると。
ほうせば、だれがサルを連れてくるかとようことになって、カメが行くことになったと。
カメがサルを連れて来ることになったと。
カメが泳いで行くと、サルは、松の木の上に上っていたてんがの。
カメは
「サルどん、サルどん、おまえ、竜宮城へ行って見たくないか」
とようたと。サルは
「行って見たいろも、おら、泳がんね」
とようたと。カメが
「ほせば、おれの背中に乗れや。おれが連れていってやらあ」
ようんだんが、サルは
「ほんだか。なじょうも、連れていってくれ」
とようて、サルは竜宮城に行って、ごっつぉ食わせられ、喜んで遊んでいたと。
ほうしると、クラゲがサルを見て
「サルの馬鹿が。てめいの生肝取られるのも知らんで、いい気になって遊んでいらあ」
とようたと。
それを聞き付けたサルが、しおれて元気のないかっこうしているがんを、カメが見て不思議に思い、
「おい、サルどん、馬鹿げに元気がないが、どうした」
と聞いたと。サルは
「おら、困ったいや。大事な生肝を天気がいいすけ、木にほしたまま来てしもうた。どうも雨が降りそげだんだんが、とりこんでこんばならん」
とようたと。カメは
「そらあ、おおごとだ。おれが背中に乗せるすけ、木から取り込んでこいや」
そうようて、サルにたらかされて、背中に乗せていったと。
ほうして、サルは木に登ったまま降りてこんかったと。
カメは心配になって
「サルどん、サルどん、はや生肝取り込んでこいや」
とようたと。サルは
「馬鹿、なにようているや。生肝なんて出したり、入れたりするもんでない。生肝取られれば、死んでしもうに決まっていらあ。そんげのどこへおらあ、へえ(もう)いがんどう」
とようたと。カメが
「なに、おめえの生肝だれが取るとようた」
とようたら、サルは
「おらあ、クラゲから聞いた」
とようんだんが、カメは、仕方なしに竜宮へ帰っていったてんがの。
クラゲはサルに聞かせたてがんで、骨を抜かれてしもうて、今でもクラゲは、骨がないのだと。
いきがきれた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の闘争>をテーマとしたお話です。