新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
町のネズミと村のネズミ(動物の闘争)
あったてんがの。
あるどこへ、町のネズミとざいごう(田舎)のネズミがあったと。
ざいごうのネズミが、町のネズミに
「おめえ、おらどこへよばれて来いや」
とようたてんがの。
町のネズミがざいごうのネズミのどこへ呼ばれていったと。
蔵の中へ連れていって
「さあ、この米おめえの好きなように食え」
とようんだんが、町のネズミはサンザン食ったと。
こんだ小屋へ連れていって
「さあ、このダイコンだの、イモだの、ニンジンだの、いっぺえあるんだんが、なんでもいっぺえ食え」
とようたてんが、町のネズミはその野菜もさんざ食ったと。
町のネズミは
「おら、おめえの家にきたろも、うめえもんがねえ。こんだおらの家に来いや」
とようて、ざいごうのネズミが町のネズミのどこへ行ったてんがの。
町の台所には、いろいろうめえごっつぉがあるてんがの。
ごっつぉを食おうとしると、人が戸をガタガタあけるんだんが、たまげて逃げるてんがの。
ちっとめて、また台所でごちそうを食おうと思って行くてんがの。
ほうしると、家のショが
「どうも今夜は、ネズミがガタガタして、おおごっだいや」
とようて、戸を開けてくるてんがの。
ネズミはまた逃げだして、ごっつぉがいっぺいあるろも、人がうるさくて気が落ち着かんで、食う暇がねえ。
ざいごうのネズミは
「いやいや、町はごつつぉがいっぺえあるろも、食っている暇がねえ。おらざいごうがいっちいい。ごっつぉはなくても、食うものはいっぺえあるし、らくらくしていられる」
とようて家に帰って来たてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の闘争>をテーマとしたお話です。