新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
モズとキツネ(動物の闘争)
あったてんがの。
モズとキツネが道端でぱったり出おうたてんがの。
モズがキツネに
「キツネどん、キツネどん、このごろうめえもんにあたりつかんけえ」
と聞いたてんがの。キツネが
「いやあ、うめえもんどころじゃねえ」
とようんだんが、モズが、
「ほうせば、なじだ。今日は、二人で、うめえもん食わんか」
とようたら、キツネが、
「ほうか。なにか、いいことあるけ」
とようと、モズが、
「ほれ、向こうから、魚屋が、魚かたねて(かついで)来たすけ、あの魚取って食おうねか。おれがあの魚屋をたらかして、魚かごをおっぱなして、向こうへつれてゆくすけ、そのすきに魚をとれや。それまで、おめえはこのやぶの中に隠れていれや」
ようと、キツネは
「よしきた」
とようがで、やぶの中に隠れていたてんがね。
魚屋が来ると、モズは、手の届きそうな木の枝に止まって、キイ、キイと鳴いていたてんがの。魚屋が
「このモズとってやろう」
と魚かごをそこに置いて、モズのとこへ手を伸ばしたてんがの。
モズはパーッとたって、別の木の枝に止まったてんがの。
魚屋がそこへいってとろうとしたら、またつぎの枝にたって行くてんがの。
そんげのことなんべんもやっているうちに、モズは手の届かないとこにパーッとたっていってしもうたと。魚屋は
「あんげのモズかもうて、こってい手間を取ってしもうた」
とかごのどこへ来て見たれば、魚が一匹もねえがらと。
モズはキツネのどこへ行って
「なじれい(どうだい)。魚とったけえ」
と聞くと、キツネは
「あの魚みんなとってきて、おめえのお陰サンザンん食うたや」
とようたと。モズが
「おめえ、おれの分け前取っておいたかや」
とようんだんが、キツネは
「ああ、おめえのは、骨をいっぺい取って置いた」
とようたと。モズは
「おらあ、骨なんか食わんねえ」
とようて、
「キツネめ、こんだひどい目にあわせてやる」
と思うていたてんがの。
またさっきの魚屋が魚をかたねて来たてんがの。モズは
「おい、キツネどん、もういっぺん、魚屋をたらかして、魚を食おうか。おめえこんだ杭になって立っていれや。おれがその上に止まっているすけ」
とようんだんが、キツネは杭になって、モズはその上に止まっていたと。魚屋が来て
「このモズめ、今度はたらかさんねえぞ」
とそこへ魚かごを下ろして、てんびん棒でいせいよくモズをはたいたと。
モズはパーッとたって逃げてしもうたと。
てんびん棒が杭に当たって、キツネは腰をたたかれて、やっと逃げて行ったと。
モズはキツネのどこへ行って
「おいキツネ、どうした」
とようと、キツネは
「おら、腰の骨を折って痛くて痛くてどうしょうもねえ。おおめにおうた」
とようたてんがの。モズは
「ほら見れ、てめえばっか、ひとらでうめえもん食えば、後がおっかねえもんだ」
とようたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の闘争>をテーマとしたお話です。