新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
タカとエビとエイ(動物の競争)
あったてんがの。
あるどこへでっこいタカがいたと。
自分の羽を広げて見て
「でっこい羽だ。おれくらいでっこい羽は世界にあるまい。試しにそこらを騒いでみよう」
そう思うて海へ飛んでいったと。
そのでっこい羽で一日中飛んで、晩方(ばんがた)になったんだんが、泊まるどこはないかなあと見たら、杭が一本あったと。
「こらあ、いいあんばいだ。今夜ここに泊まろう」
とその杭に一晩泊まったと。
朝起きて見たら、杭がぐらぐら動いているみてえらんだんが、また海を一日中飛んで晩方になると、また杭が一本あったと。
そこへ泊まって朝起きてみたら、その杭がぐらぐらと動いて、なんだか生きているみてえだなあと思うていたら、その杭がズーッとあがってきて良く見たらエビの頭だったと。エビが
「だれだ。ようべも、おれのつのの上に泊まって」
とようたら、タカはたまげてしもたと。タカは
「エビどん、おらは、世界一でかいと思うたら、おめいにはならん。世の中には、でかいもんがいるもんだ」
とようて逃げていってしもうたと。エビは
「なるほど、ほうせば、おれが世界一でっこいな。そこらを騒いでこう」
とようて、海を一日泳いで、晩方になって来たら、ほら穴があったんだんが、そこへ泊まって、つぐの日また一日泳いで、晩方またほら穴に泊まったと。その朝
「おれはこうして泳いでみるろも、おれよりでかい魚はいねえな。おれは、世界一でっこいな」
とひとりごとようていたと。ほうしると
「あはっはっは」
と笑う声がしたと。ほうして
「何が世界一だ。よんべもおれの鼻の穴に泊まって、おらは、くすぐったくて、どうしょうもない。おら、エイとよう魚だ」
ほうしてハックションとようて、くしゃみしたら、エビはどっかへ吹き飛ばされて腰が曲がってしもうたてんがの。
そうしてエビは、今でも腰が曲がっていると。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の競争>をテーマとしたお話です。