新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
クマとキツネ(動物の闘争)
昔あったてんがの。
あるどこに、クマとキツネがいたてんがの。
ほうして相談して、山奥で、畑を作ることにしたてんがの。キツネが
「クマどん、おら種買って来るすけ、おめえ、畑を打っておかっしゃい」
というたてんがの。
クマも承知して、畑打っているどこへ、大根の種を買うてきたてんがの。キツネは、
「クマどん、この種まいて、葉の方はおめえ取れやれ。根の方はおれが取る」
とようて、クマも
「良かろう、良かろう」
と決めて、ダイコンの種をまいたてんがの。
秋になったれば、いい大根ができたろも、クマには葉っぱだけやって、キツネはダイコンをてめえで取って、冬中らくらくと食っていたてんがの。
ほうして、また春になったれば、キツネがクマのどこに行って、
「今年もまた、畑作ろうねか。去年と違って、こんだおまえは根の方、おれは葉っぱの方にしょう。葉っぱの方は、べとから上だ」
とようたてんが、クマも
「それでよかろう」
と承知したてんがの。キツネが
「それじゃあ、おまえ畑打ちだ。おれは種買ってくる」
とようて、キツネが買ってきたのは、イチゴだったてんがの。
ほうして、葉がでて、真っ赤な実がなったれば、みんなキツネが持っていったてんがの。
クマはなんでも食うとこがねえかったと。クマが怒って
「キツネめ、おれにばっか、難儀させて、てめえは、楽して、いいどこみんな持っていぐ。あんげのもん、もうつき合わねえ」
とようたと。
ほうしたれば、キツネがクマのどこへ来て、
「おい、クマどんや、やぶにはちみつがあるすけ、取りに行こう」
とようたら、クマははちみつが好きだすけ、
「はちみつだけりゃ、取りに行こう」
といって、キツネと行ったてんがの。
クマがやぶに入ったれば、ハチが一度にブーンと出てきて、クマに向かってきたてんがの。
クマが、ハチを手でぼうたり、頭でぼうたり、しているこまに(間に)、キツネははちみつを取って、持っていってしもうたてんがの。
それから、キツネはなにも食う物がなくて、またクマのどこへ、来たてんがの。キツネが
「クマどん、何かいいことはないか」
とようと、クマは
「いいことがある。川原に馬がいるすけ、馬を取って食おう。馬の後足てや、弱いもんだすけ、おめえ、馬の後足に食いついてみれ」
とようんだんが、キツネが
「よかろう。よかろう」
とようて、キツネはほんだかと思うて、川原に行って、馬の後足に食いついてみたてんがの。
馬の後足は、強いがらすけ、ピンピンとけられて、大けがしたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の闘争>をテーマとしたお話です。