新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

クマとキツネ

高橋ハナむかしがたり

新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。

クマとキツネ(動物の闘争)

昔あったてんがの。

あるどこに、クマとキツネがいたてんがの。

ほうして相談して、山奥で、畑を作ることにしたてんがの。キツネが

「クマどん、おら種買って来るすけ、おめえ、畑を打っておかっしゃい」

というたてんがの。

クマも承知して、畑打っているどこへ、大根の種を買うてきたてんがの。キツネは、

「クマどん、この種まいて、葉の方はおめえ取れやれ。根の方はおれが取る」

とようて、クマも

「良かろう、良かろう」

と決めて、ダイコンの種をまいたてんがの。

秋になったれば、いい大根ができたろも、クマには葉っぱだけやって、キツネはダイコンをてめえで取って、冬中らくらくと食っていたてんがの。

ほうして、また春になったれば、キツネがクマのどこに行って、

「今年もまた、畑作ろうねか。去年と違って、こんだおまえは根の方、おれは葉っぱの方にしょう。葉っぱの方は、べとから上だ」

とようたてんが、クマも

「それでよかろう」

と承知したてんがの。キツネが

「それじゃあ、おまえ畑打ちだ。おれは種買ってくる」

とようて、キツネが買ってきたのは、イチゴだったてんがの。

ほうして、葉がでて、真っ赤な実がなったれば、みんなキツネが持っていったてんがの。

クマはなんでも食うとこがねえかったと。クマが怒って

「キツネめ、おれにばっか、難儀させて、てめえは、楽して、いいどこみんな持っていぐ。あんげのもん、もうつき合わねえ」

とようたと。

ほうしたれば、キツネがクマのどこへ来て、

「おい、クマどんや、やぶにはちみつがあるすけ、取りに行こう」

とようたら、クマははちみつが好きだすけ、

「はちみつだけりゃ、取りに行こう」

といって、キツネと行ったてんがの。

クマがやぶに入ったれば、ハチが一度にブーンと出てきて、クマに向かってきたてんがの。

クマが、ハチを手でぼうたり、頭でぼうたり、しているこまに(間に)、キツネははちみつを取って、持っていってしもうたてんがの。

それから、キツネはなにも食う物がなくて、またクマのどこへ、来たてんがの。キツネが

「クマどん、何かいいことはないか」

とようと、クマは

「いいことがある。川原に馬がいるすけ、馬を取って食おう。馬の後足てや、弱いもんだすけ、おめえ、馬の後足に食いついてみれ」

とようんだんが、キツネが

「よかろう。よかろう」

とようて、キツネはほんだかと思うて、川原に行って、馬の後足に食いついてみたてんがの。

馬の後足は、強いがらすけ、ピンピンとけられて、大けがしたてんがの。

いきがさけた。

おはなし

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