新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
サルとカニ(動物の闘争)
あったてんがの。
あるどこにサルとカニがいたと。
天気がいいんだんが、サルがだれか来ないかなあと外へ出ていると、向こうからカニが来たと。
「カニどん、どこへ行く」
とサルが聞くと、
「天気がいいんだんが、山へ遊びに行く」
とようたんだんが、サルも
「おれも行く」
とようて、サルとカニが山へ遊びに行くことになったと。
サルは柿の種を拾うたと。
カニはにぎりめしを拾ったと。
サルは
「カニどん、そのにぎりめしをおれの柿の種と換えてくれないか」
とようたと。カニは
「おらやだ」
とようろも、サルは
「にぎりめしは食ってしまえば、絶える。柿の種はまいておけば、芽を出して木になる。秋になれば、実がいっぱいなる」
とようんだんが、カニはサルの柿の種とにぎりめしと換えたと。
サルはにぎりめしを食って山へ行ってしもうたと。
カニはその種をまいて、
「早く芽を出せ。出さんと、はさみで切るぞ」
とようて、水をくれてやったと。
そのうちに、芽を出したと。カニが
「早く木になれ。ならんと、はさみで切るぞ」
とようてたら、でっこい木になったと。
秋には、柿の実がいっぱいなったと。カニが
「だれか、この柿もいでくれるもんないかなあ」
とようたと。
ほうしたら、そばのやぶの中からサルが出てきて、
「カニどん、カニどん今何ようたや」
と聞くと、カニは
「この柿うめえげになったんだんが、だれか、もいでくれるもんがいたら、サンザン食わせるし、おらもサンザン食われるがな。そうようた」
「ほうせや、おれがもいでやらあ」
とようて、サルはチョロチョロと木に登ったと。
サルは木の上で自分でばっか食ってカニには一つもくれねえと。カニは
「サルどん、おれにも一つくらっしゃい」
とようたと。
サルは一つもいで、けつのあっぱつけて、投げてよこしたと。
「サルどん、サルどん、こらきったなくて食わんねえすけ、いいのをもいでくらっしゃい」
とようたら、こんだあ青い大きいもんもいで、カニにねらってぶつけたと。
カニのでっこい腹にぶつかってカニの親は死んでしもうたと。
腹から子ガニが出て、腹からでた子ガニが悲しがって泣いていたと。
そこヘハチにクリにうすに牛のくそが来たと。
「おめえはなんで泣いている」
ときくんだんが、カニが
「サルが青い柿を親にぶつけて殺した」
とようたと。四人が
「ほうせば、おらがサルを殺してやるから泣くな」
とようて、みんなしてサルの家に行ったと。
サルの家は留守でだれもいねえてんがの。
ハチは水がめの中へ、クリはいろりのなかへ、うすはがんぎの上に、牛のくそは入り口にいたと。
サルが家にきて
「ああ、さぶ、さぶ」
とようて、火に当たろうとして、火をたいたと。
そうしたら、クリがはねてサルの顔に飛び付いたと。
サルが流しの水がめのどこへ飛んでいって、水をつけようとしたら、ハチがチクリと刺したと。サルが
「いてえ、いてえ」
とようて、
「こらあ、家の中にいらんねえ」
とようて、外へ飛び出ようとしたら、牛のくそがあってそれを踏んで転んだと。
うすが上から落ちてサルをのりつけしたと。
そこヘカニの子が来てはさみでチョキンとサルの首を切ったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の闘争>をテーマとしたお話です。