珍宝(ちんぼう)の話
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
むかしあったてが。
ある山奥の村へ娘と婆さがいたてがの。
今日も娘と婆さが争っていたと。
「男衆(おとこしょ)のまんなかにぶらさがっている棒は、あら、骨があるがっだか」
「いや骨なんかあるんだな」
といさけえしていたと。
「じゃあだれか男が来たら、触ってみて決めようて」
と話がまとまったと。
ほうしたらちょうどそこへ男がきたてがの。
「お前さん、お前さん、助けの神だなんや。男の真ん中へぶら下がっているがんに骨があるかないかでもめているすけ、触らしてくれや」
と婆さまが男にたのんだと。
初めに婆さまが男ののに触ったと。
ほうしたら婆さまの言う通り骨がなかったと。
こんだあ、娘が触ったら、もくもくと骨になっていったと。
娘は喜んで、
「骨だ、骨だ」
といったと。
娘も婆さまも
「ほんにまあ、男の真ん中にあるがんは珍しい棒だ」
といったと。
これは珍棒といって、それでちんぼという名前がいまでも続いていると。
そこでいきがぽんとさけた。
原 北原勲
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