きつねとかわそ
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったげろ。
きつねは、なんかごっつぉが食いたくてあがあがしていたと。
かわそ(かわうそ)が毎日魚焼いて食っているんだが、
「かわそどん、なあは毎日魚焼いて食っているようだろも、魚てやどうやってつかめるんだい」
と聞いてみたと。ほうしたら、かわそは、
「そっげのこと、わけねえこてや。夜のいい寒い晩に、ど(池)へいって、しるっぽさげていれや、魚なんかいっくらもかかるこてや」
とおせてくれたと。きつねは、
「これはいいこと聞いた」
と思うて、かわそのいったように、夜のいい晩、どへいって、しるっぽ下げて魚のかかるがん待っていたと。
そのうちに、だんだん重なってきたろも、
「まらまら、もうちっとかかってから上げよう」
と思うて、そのまんまにしておいたと。そのうちにだんだん夜があけてきたんだんが、
「子供にめっけられて、はたかれるとおごっだ」
と思うて、抜こうとしたろも、あんま重くて抜げねがだと。
「これはばかげにどうろかかったげで、いっこう抜げねよ」
と思うておおごとになってきて、
「おびなもこびなも抜いでくれ。しょうしよのざっこふるはなせおびなもこびなも抜いてくれ。しょうしよのざっこふるはなせ」
と唄うたと。ほうしたら、子供がこれを聞きつけて
「ば、ねら、きつねがおもしいこというていらあ、いってみれ、いってみれ」
というて、棒切れもってたたいたと。
きつねは、せつながって、しっぽ切って逃げたと。
これでいきがすぽーんときれた。
楢沢 高橋篤太郎
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