新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。
煮豆のおかわり
あったてんがの。
昔むかしあるどこに小んこい山寺があったてや。そのお寺に、和尚さんと小僧さが住んでいたってんがない。
和尚さんてやちっとばかおもしい人でいつも小僧さのことをかもうたり、たらかしたりしていらしたってんがの。小僧は小僧でいつか和尚さんのお面を一本取ってくいろと思っていたてんがの。
あるどき煮豆でも作ろうと思うて豆をひやかしておいたってや。そうして昼飯食ったくちに
「小僧 小僧、おらこれからちっと昼休みするすけ んな煮豆煮ておけや。」と言うて奥の寝間へ行かしたってんがの。
小僧さは豆を洗うて鍋をかぎさまにかけて火を焚きしはねたって、そうしていつも和尚さまにかもわれたりたらかされたりしているすけ 今日という今日ばっかしゃ和尚さまのお面を一本取ってくれたいもんだと考えていたと。
そのうちに煮豆がグッツラグッツラと煮え立ってきたってんがナイ
小僧は砂糖を入れたり醤油入れたりして煮ているうちにうまげな匂がぷんぷんとしてきたと。
丁度そこへ和尚さまが起きてこらして
「小僧、小僧、へえ昼起(ヒールキ)だど、煮豆は出来たかや。」と言わっしゃるんだんが「ハァ、今丁度煮えたどこだいの。」「そうか、ようしたようした ンナこれから遊びに行ってきてもいいど。」と言わっしゃるってんがナイ
そうらきた和尚さまはオレのこと遊びにやってそのこまにこの煮豆こびるに食うつもりだなと思うて遊びに行くふりして本尊様の陰でかくれて様子を伺っていたってんがナイ。
そうしたらなんのじ和尚さまが天塩皿を持ってきて煮豆を盛ってそれをたがってウロウロしていらっしゃるがんだと。ハハーン和尚さまはどっかへかくれて食うつもりだなと思うて見ていたってが、それ持って便所へ入らしたと。
小僧さが「そーらきた」ってがでてまえも天塩皿に煮豆を盛って便所の前にたっていたってや。
ちっとばかめいたら煮豆食いあげた和尚さまが皿をペランペラーンとなめながら出てこらしたってが、小僧がそこへ立っているんだんがたまげて「小僧小僧 ンナなにしているや。その煮豆はどーいがんだ。」小僧はすましこんで「ハイ和尚さまおかわりを持ってきました。」と言ってつんだしたと。
和尚さまはヘェペタンとそこへ尻もちついてしもうたてんがの。
それでいちごポーンとさけた。
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