きつねと馬喰
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったげろ。
上のきつねと下のきつねが、金もうけしてごっつぉ食う相談したと。上のきつねが、
「おが馬喰に化けるすけ、なあ馬に化けれ。ほうして、峠のおおぎ屋へ売りにいげやいいねか」
というたと。下のきつねも、
「それがいい、それがいい」
と承知(しょうち)したんだんが、上のきつねが
「ほうせや、おが明日朝(あしたあさ)げ、馬喰に化けて迎えに行ぐすけ、待っていれや」
というて、別れたと。
この相談を、そばの草やぶに隠れていた馬喰が、いんな聞いてしもうたがだと。馬喰は、
「これはいいこと聞いたざい」
と思うて、家へもどったと。
つぐの朝げ、馬喰は、下のきつねのどこへ
「仕度ができたかい」
というて、いったら、下のきつねが、
「なったら上手にばけたんだい」
とたまげたと。
馬喰は、きつねの化けた馬をおおぎやへ売りに行ったら、なじょんかいい値で売れたと。
馬喰はその銭もろうて、とんとんと家へもどっていったと。
きつねは、馬に化けていったろも、すぐなわふるいて(ほどいて)戻ってきて、上のきつねのどこにいったらまだ寝ていたと。
下のきつねは、上のきつねがしらばっくれて寝ているがんだと思うて、
「きつねどん、なあ今、おおぎやから、銭どうろもろうてきたが、どうしたい」
と聞いてみたと。上のきつねは
「おれはいままで寝ていたんだんが、なんもわからんこてや」
というんだんが、ほんとの馬喰に銭いんなとられたことが、初めてわかったてや。
峠のおおぎやじゃ、馬屋へ行ってみたら、馬はいなくて、きつねの毛が残っていたばっかだったと。
これでいきがすぽーんときれた。
楢沢 高橋篤太郎
……もっと読んでみたい昔話