きつねの仕返し
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
昔あったげろ。法印(山伏)さまが峠にさしかかったら、きつねがきもちよげに寝ていたと。
法印さまは、このきつねにわさ(いたずら)してやろうと思って、もっていたほら貝をきつねの耳にあてて「ぼあ」と吹いてたまがしたと。
きつねは、たまげてとびあがって、後ろ見い見いどこかへ逃げていってしもうたと。
そのうちに、たちまち日が暮れてしもうてんがのう。
法印さまは、これは、大へんだと思うて、早帰らんけやならんと思うたろも、真っ暗になってしもうたと。
ちょうどそばへ、山仕事に使う仕事小屋があったんだすけ
「ここに腰掛けて、夜が白むまで待っていようぜ」
とはいっていったと。よく見たら、小屋の隅に、棺桶みていのがんが、おいてあるだと。
「こらおっかねぜや」
と思っていたら、その棺桶の中から
「法印さま、法印さま」
とよばる声がして、中から手が一本でてきて、また
「法印さま、法印さま」
とよばるがだと。
法印さまはおっかなくて、あとじさりして、小屋の外へ出たと。
ほうしたら、ごうぎなゆうれいが出て来て、法印さまは、たまげて逃げたと。
ほうしると、がんくらおち(崖からおちて)して、ずどーんと下の方へおったと。
下じゃ昼間で、人がたんぼの中で、たなぐさとりしていたと。
きつねをたまがしたんだんが、きつねがおこって、仕返ししたがんだと。
いきが、すぽーんとさけた。
苔野島 粕川悦
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