六人の地蔵様
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったげろ。
爺さまと婆さまは、正月が来たろも、銭(ぜん)がなくて、じょう柵(箱膳収納棚)の中に縮切(ちぢみき)れがちいとばかりあったと。婆さまが、
「爺さま、爺さま、ここへ縮切れでもちいとばかあるが、これを小千谷(おっぢや)へれも持っていって、売ってお茶でも飲もうねかい」
というんだんが、爺さまも
「それがいい、それがいい」
と小千谷まで売りへ行ぐことになったと。
爺さまがそれを持って峠まで行ぐと、道端へ六地蔵様が、かねっこる(つらら)さげて寒げにしていたと。
爺さまは、あんま寒げだんだんが、持っていた縮切れで、ほおっかぶりさして家へ戻ってしもうたと。
ほうして婆さまに、
「婆さま、婆さま、峠まで行ったら六地蔵様が、かねっこるさげてあんま寒げだんだんが、縮切れかぶして小千谷へ行がんでしもうと」
というと、婆さまも喜んで
「いいごっつぉ、今年の正月は、二人してなんでもしねえで早く寝ようぜ」
というたと。
夜さる、二人して寝ていると、こうぎな吹雪の中を、
「ちーん、じゃらじゃらちーん、じゃらじゃら」
と葬礼(葬式)の音がしるんだんが、
「ほっげの夕さる、どこの衆が葬礼出しやるがだろか」
といって、おっかねんだんが、部屋の隅へすくらまって(うずくまって)いたと。
ほうしたらその葬礼が爺さまと婆さまの家の中へはいってくるがだと。
へんなかへ、どすんと重たいがんを置いて、がやがやと外へ出ていったと。
爺さまも婆さまもおっかねんだんが、部屋から出ようとしなかったと。
ほうしるうちに、朝げになったんだんが、へんなかへ出てみると、へんなかのまんなかに桶が置いてあったと。
その蓋あけてみたとこてんが、中には大判小判がぎっしり入っていたと。
ばけもんだと思うたら、銭だったんだんが、二人していい正月したと。
これでいきがすぽーんと切れた。
楢沢 高橋篤太郎
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