あやチューチューこやチューチュー
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんとむかしがあったてんがの。
正直で、なじょんか(とても)はたらきもんの、じさまとばさまがあったと。
あるろき、じさまあ、やまへ畑仕事にでかけたと。
あんまくたぶれたんなんが、くわを前において一服吸っていたと。
ほうしっと、そこへきれいな小鳥がいっちゃ(一羽)とんできて鍬の柄の先にとまったと。
じさまあ、あんまきれいな小鳥だったんなんが、
「鳥、鳥、この手の上にとまらんかい」
というたと。
ほうしたらその小鳥はちゃんとじさまの手の上にとまったと。
じさまあ、こっだ、へら(舌)出して
「鳥、鳥、おれのへらの上にとまらんか」
とゆうたてんがの。
ほうしたら小鳥は、ちゃんと、じさまの、へらの上にとまったと。
そのろき、じさまあ、なんの気なしに、その鳥をごくんとのんでしもうたと。
ほうしたらきゅうにへそのあたりがかあなって(痒くなって)きたと。
こらおかしいと思って、だしてみたら、へそのろこへきれいな羽が一本おえたと。
その羽を、こつんと、ひっぱると、きれいな声で、
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。
じさまあ、あんまおもしいんなんが、うちへ帰って、ばさまに羽ひっぱってみしたと。
ほうしたらやっばりきれい声で、
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。
さあそのことが村中の評判になって、とうとう、お城の殿様の耳へはいったと。
めずらしずきの殿様は、そんま(すぐ)じさまをよばって、わけを聞いたと。
じさまあ、殿様にわけゆうて聞(きか)して、殿様から、へその羽をひっぱってもろうたと。ほうしたらやっぱり
「あや、チュー、チュー、こや、チュー、チュー。にしき、さかずき、ビビラビンとのめ」
というたと。殿様はたまげて
「お前が正直ではたらきもんだすけ、神様がさずけてくれただろう」
というてほうびいっぺいくれたと。
そっで、じさまとばさまは一生らくらくとくらしたと。
いちがすぽーんとさけた。
二本柳 田中秀吉
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