死人(しにん)の茶菓子
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
さてあったそうな。
大尽の聟取り娘が、家の前に書き出しをしておいた。
それには、
「聟の欲しいどこ」
と書いてあった。
この書き出しを見て、男が家へ入っていった。
家の中はばかげにきれいであったと。
そこへ休んでいたら、家の衆が新しい平鍬に棺桶かずいてお墓にいったがんが見えたと。
墓場へつくと、塔(とう)はねて、死人を掘り出し、新しい棺桶の中に死人を入れて、家へ戻って来たと。
家の中でその棺を開けて、まないたの上に死人を載せ、包丁で死人の手や足を切って、皿に盛って出した。ほうして
「ひとつ食ってくんなさい」
というんだんが、気味が悪かったろも、食わんねがんをお茶菓子に出すことはないと思うて、手の先を一つ食ったと。
ほうしたら、それは砂糖で人間の形に作ったがんだったと。
その茶菓子食ったんだんが、そこの衆は喜んで聟にしてくれたと。
これでいちがさけた。
太郎丸 長谷川モト
……もっと読んでみたい昔話