鴻の池の金瓶(かねがめ)
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったっつお。
大坂の町に鴻の池という家があったと。
そこの町に、夜さる人の寝静まったころ、七つ八つの坊主が
「あぶない、おっかねえ。あぶない、おっかねえ」
というて、さびしげに町を歩くがだと。
その坊主が、そういうて町中あいぶどきは町中の人が、おっかながって、寝床へもぐりこんで震えているがだと。
鴻の池の爺さまは、度胸のいい爺さまだったと。
「こんにゃ、おが坊主のいぐ先を見届けてやろう」
と思うて、坊主のあとをずっとついていって見たと。
ほうしたら、坊主は、
「あぶない、おっかない」
というて、下の方へずんずんいぐがだと。
暗い闇夜をどこまでもついていってみたら、大川のはたに、でっけえ瓶が落ちそげになっていたてがのう。
ほうして、よく見たらその子の影がねえがだと。
「こらあ、不思議らざい」
と思っていると、その子が瓶の中につるっと入っただと。爺さまは
「はて不思議な瓶だが、どうしたろう」
と考えてみたと。
しかたがねんだんが、鉢巻締めて、さんじゃくほどいて、上の方へ担ぎだしたと。
ほうしたら、その瓶が
「重たいたって、重たいたって」
としゃべるんだんが、それをこっだ家へ持ってきて、ふたをとってみたと。
ほうしたら、昔の銭が瓶の中にぎっしり入っていたと。
家中喜んで、なじょんか大金持になったと。
勇気出してみれや、なんでも金が授かると。
これでいちがすぽーんときれた。
上岩田 木原カノ
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