新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

サルムコどん

富川蝶子の昔話

新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。

サルムコどん

あったてんがの。

昔あるどこに娘っ子三人持ったジイサがあったてんがの。ある日、ジイサがやまへごぼう葉を取りに行ったてんがの。ほうして一所懸命でウンズウンズコ引張るどもいっこう抜げねってんがの。ジイサが

「あーあ誰かこのごんぼう葉を抜いてくいたら、おら娘っ子三人持ったがどれか一人嫁にくいるどもな。」と言うたと。それを山の猿が聞こえつけてガサガサと出てきて

「ジイサジサおまえ今何というた?」

「おら何も言わん。」

「いいや言うた言うた。」

「おら、このごんぼう葉があんま抜げねんだんが、これ抜いでくいたら娘っ子三人持ってるがどれか一人嫁にくいるがなと言うたがんだ。」というたと。ほうしたら猿が「そうかい。そいだばオレが抜いでくいる。」というたと思うたら「よいしょよいしょ。」とたちまちみんな抜いでくいたってんがの。

ジイサ喜んでごんぼっ葉をうちへ負(ぶ)って帰って来たども、さあて誰か一人猿のどこへ嫁にやらんばねと思うたら心配になってなんぎなって、ねまへ入って「ウンウン」とうなっていたってんがの。そこへ一番上の娘が

「ジサジサ、どっかあんべいでも悪いかい。お湯でもお茶でもやろうかへのし。」というてきたってんがナイ。ジサは

「いいや。湯も茶もいらないが、おれの言うころ聞いてくれや。」

「アイアイ。おまえさの言うことは何でもきくで。」と言うたんだんが、ジサ喜んで「山の猿のどこへ嫁に行ってくれや。」

と言うたと。ほうしたら

「やだれ。この馬鹿ジサ、誰が猿のどこへなんか嫁に行ごうばし。」と逃げて来たってんがナイ。ジサ又せつながって「ウンウン」とうなっていたってこんだ。二番目の娘っ子が

「ジサジサ、どっかあんべえでも悪いかい。お湯でもお茶でもやろかへのし。」と言うて来たっての。

「湯も茶もいらねがおれの言うこと聞いてくれや」

「アイアイ。おまえの言うことだば何でもきくで。」

「山の猿のどこへ嫁に行ってくれや」

「やだれ。この馬鹿ジサ、誰が猿のどこへなんか嫁に行こうばし。」と逃げてきたと。ジサ

「あーあ大ごとした。あと一人しかいないがに。」

ほうしたらこんだ三番目の娘っ子が

「ジサジサ、どっかあんべいでも悪いかい。お湯でもお茶でもやろうかのし。」と言うてきたってんがの。

「いえや、湯も茶もいらんがおれの言うこと聞いてくれや。」

「アイアイ。おまいの言うことだば何でもきくで。」

「山の猿のどこへ嫁に行ってくれや。」と言うたら

「アイアイ。猿のどこへでも狐のどこへでも行ぐで。」というってんがの。ジサへえ喜んでもっくり起きして町へ行っていい着物買って来て支度していたってんがの。丁度そこへ山の猿が

「ジイサジイサ、オラ約束だすけ嫁もらいにきたがのし。」

と言ってきたとの。

「ああ待っていたで。なじょも連れて行ってくらっしゃい。」というと三番目の娘っ子が猿の嫁になってついて行ったと。

猿のうちへ着いたら娘っ子が三日たつと「ヒザナオレというて餅をついて里へ持って行かんばんがのし」というたと。猿が「そうか。そうせばオレも餅をついて持って行ぐこてや。」と言うて用意してたってんがの。

そいで三日目に餅ついてその餅重箱にうつそうとしたら娘っ子が「ああ猿どん、そればっかしゃやめてくらっしゃい。おらこのジサ重箱に入れた餅は重箱くそうて食わんねというで、おまえなんぎでもうすごと負(ぶ)て行ってくらっしゃい。」と言うんだんが猿は荷なわで、うすごとぶて二人して里へ行ったと。

丁度、里の近まに川が流れているがだってんがの。その川ばたに一本の桜の木があって、ばっかきれげに咲いていたっててんが、娘っ子が

「猿どん猿どん。あの花は里のジサの大好きな花だが一枝持って行ったらなじょん喜ばれるろうがのし。」と言うんだんが猿は「そうか。オレが木に登って取ってくらや。」と、ぶっていたうすをそこらへおろそうとしたてんがの。

「ああ猿どん猿どん、そればっかしゃやめてくれし。里のジサ餅がベトくそうて食わんねと言うすけ。おまえ、やでもうす負(ぶ)たまんま木に登ってくらっしゃい。」と言うてんがナイ。猿は仕方なく、うすぶたまんま木に登って
「子の枝でいいかー。「いや、その天井がいいな。」又ちっと登って「この枝でいいかー。」「いーや、その天井がいいな。」と何べんもいううちに一(い)っちうらっぽしになったと。

「ああ、それそれ、それが一っちいいようだいし。」と言うたらポッキン!と木の枝がほっぽしょれて猿はうすをぶたまんまガサガサパッチャンと川の中へ落ってしもうたってんがな。娘っ子はせつながって

「サルどんかんべんしてくらっしゃい」と言うていたっての。猿は

「流れるこの身は惜しくはないが後に残れる嫁っ子が可愛い。」と泣きながら流れて行ってしもうたってんがの。

いちごポーンとさけた。

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