山の神の梨
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったげろ。
ごうぎのだいろ(大道)で、梨売りが出ていて、そのめぐらで、村中の衆が梨買うて食っていたと。
ほうしたら、むこうからぼろぼろの着物着た爺さが来て、梨売りに
「おめえさん、のどがかわいたが、梨一つめぐんでくんねか」
とたのんだと。ほうしたら梨売りが、
「おめみてよのがん(もの)にくれる梨はねよ。ぽっつぉ(へた)でも拾って食っていれ」
と怒鳴りつけたと。
ほうしたら、梨買うていた人の中で、親切な人がいて、梨を二つ買うてあつけたと。
爺さは喜んで、その梨を食ってから
「いっとき来てくんねか」
というんだんが、ついていぐと、きれいな野原があって、そこで休んでいたと。
ほうして
「俺は、お前さんのおかげで助かったすけ、お礼がしたい」
というがんだと。
ほうして、杖で穴掘って、梨の種を入れたら、そこから出た芽が見るまにでっかくなって、でっけえ梨が、じょんならんほどなったと。
その爺さは、
「おれは山の神だが、お前が親切にしたすけ、お礼をしたがんだ」
というて、山へ戻ってしもうたと。
これでいきがすぽーんとさけた。
小国沢 村山ヨシ
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