太郎と次郎
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんと昔があったげろ。
太郎は前のかかの子で、次郎は、今のかかの子だと。
かかが平釜に湯わかして二人で萩切りに出したと。
二人が萩切って来たら、かかは
「ねら、橋かけてやるすけ、渡れや」
というて、がらがら煮立っている釜の上に、太郎には萩の橋、次郎には板の橋をかけて渡したと。
太郎は萩の橋だんだんが、途中で落って死んでしもうたと。
かかはそれを後の竹林に埋めてしもうたてや。
とっつぁが、ようさる家へ戻っても、太郎がいねんだんが、かかに
「太郎どうしたい」と聞くと
「太郎はまだ遊びにいって、こねえがだ」
というていたと。次の朝げ、まだ太郎が来ねんだんが、とっつぁが家のめぐらをぐるぐる回ると、竹林の上に、真っ赤な鳥がぱあーっとたって来て、
「ちーひゃろ、たひゃろ、板橋は渡れども、萩の橋は渡らんねえ。ちーひゃろ、たひゃろ、板橋は渡れども、萩の橋は渡らんねえ」
と歌うがだと。
とっつぁは、たまげて竹林の下掘ってみたら、太郎が埋めてあったと。
ほうしてかかを、
「なあが太郎埋めたがだろう」とせめたら、
かかも白状して心を入れかえたと。
楢沢 五十嵐石三
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