あわとこめ
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
とんとむかしがあったと。
ある家にあわという子が一人あって、その母親が死んで、その後妻にこめという子があったと。
ほうして毎日でこ(そんなに)かわいがるもしねえろも、二人を栗拾いにやったと。あわには、あわの団子こしょうて、へいる(昼飯)にあつけてやる、こめにはこめの団子(だんご)こしょうてあつけてやったと。
ほうして、あわにはけつ(底)に穴のあいた袋(ふくろ)をあつけて(もたせて)やる、こめにはけつに穴のあかね袋あつけてやったと。
ほうしてこめは、袋が穴あいていねんだんが、ひっとっつ(いっぱい)になったろも、あわは拾うてもまたしちゃ(ときどき)落とすんだんが、いっこうたまらんで、日が暮れてしもうたと。
二人して、家に帰ってくると、母親があわに
「こめは、なあより、小さいがんに、なあはこめより栗拾いでね(拾われない)」
というて、なじょんかおめた(怒った)と。
ある日、二人があんまる仲がいいんだんが、殿様が通りかかって、どちらか嫁にもらいたいと頼んだと。
こめをもらわんと母親の機嫌が悪いんだんが、歌を作って上手のがんもろうことになったと。
ちいとめて(少したって)から、殿様が盤のいべ(上)に松飾って、皿に塩を盛って、二人に歌作ってみれというたと。
母親は、自分の子にいっちさき歌を作らせたと。
こめは、
ようべこいたねこの糞は、水けらって、けらって今朝こいたねこの糞はいきがほやほや
とよんだと。
こんだあわが、
盤皿(ばんさら)や皿塩山(さらしおやま)に雪降りて雪を根として育つ松かな
と歌ったんだんが、殿様は、あわを嫁にもろうことになったと。
これでいきがすぽーんとさけた。
楢沢 高橋マス
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