おっかっか
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
昔あったげだ。
秋山の人が十日町から嫁もろうて、聟が十日町へ呼ばれていってたと。
十日町じゃ喜んで、おっかさんがぼたもちを作ってごっつぉしたと。
そのつくるどこに子どもがいて、
「かっか、おんにもくんねか」
というて、やかましいんだんが
「これは、おっかっかというて、ねらは食わんねえがだ」
というて聞かしていたと。
これを秋山の聟は寝床の中で聞いていて
「ここの衆(しょう)は、おっかっかなんかおれに食わして、殺そうとしているがだな」
朝げになって、家の衆はそのおっかっかをさわち(どんぶり)に山ほど盛って、
「さあ、いっぺえ食うてくんねか」
とすすめたども、聟は
「いらん、いらん」
というて、食わんかったと。
そこの家の衆は聟が遠慮して食わんがだと思うて、それを重箱に入れて、風呂敷に包んでくれたと。聟はおっかねんだんが、
「じゃあ、それを棹にいつけてくんねか」
と頼んで、長い竿につる下げて家へもどって来たと。
峠の途中まで来ると、ぼたもちが竿からポトンと落って、二つに割れて、中の白い餅米がめえたと。聟は、それを見て、おっかっかが口開けて、俺を食おうとしているがだと思うて、足ですりつぶして逃げで来たと。
ほうして家へ来て、嫁に、
「お前どこの家の人は、俺を殺そうとして、おっかっかというがん食わそうとした」
というたと。嫁は、
「おらこの衆は、お前にごっつぉしてくれようと思ってしたがんで、お前を殺そうとして食わせようなんてしねえごっつぉ」
というてきかせたと。
いちがさらーんとさけた。
八王子 中村ヒロ
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