悪だぬきに罰(ばち)
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
むかしあったてんがの。
あるどこにつぁつぁとかっかとナタて名前のせがれと三人で暮らしていたと。
ある日、たぬきが
「うさぎ汁食わしてくれるすけ、鍋貸してくれ」
というらと。ナタが鍋貸してやると
「さあさあ、ほっぺたがのげおちるようなうんめいうさぎ汁だ。夕飯(ゆうはん)にいんなで食ってくれ」
そういうんだんが、ナタが蓋取ってみたらきったねいたぬきの糞がいっぺい入っていたらと。
「うさぎ汁らなんて、鍋もただ借れして、この恩知らずめ」
そういうて、つぁつぁがたぬきの足をつかめて
「ナタやナタ、がんぎのどこから鉈持ってこい、早く早く」
と、つぁつぁがあんまるせかせるんだんが、ナタがまちごうてひしゃく持ってきたと。つぁつぁは
「まぬけめが、おれが鉈取りに行って来るすけ、たぬき逃がさんように押さえていれ」
というて、行ったと。ナタにたぬきが
「おらこの鉈の刃はこれぐらいでっこいぞ」
と両手を広げて見せて、
「ねらこの鉈の刃はどれぐらいだ」
とナタにいうたと。ナタは、
「おらこのがんは、こっげでっこいぞ」
そういうて思いきり両手を広げた拍子にたぬきは
「ばか、あほう、まぬけ」
というて逃げ出したと。
つぁつぁは怒って、鉈をぐーんと投げたと。
その拍子に鉈の刃がたぬきの腹をさらさらっと薄皮剥いだんだんが、罰があたって、たぬきの腹はぽんぽこ腹太鼓が鳴るようになったと。
いちがぽんとさけた。
武石 鈴木百合子
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