おくびょうとゆうごう
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
むかしがあったと。
あるところに、おくびょう者のとっつぁんがあったと。
毎晩毎晩夜中に、しょんべんこきに、てめいのかかさに頼んで連れていってもらってたと。
そうしたら、そのかかさが、あんまる、毎晩だんだんが、ある晩、ゆうごう(ユウガオ)を持ってきて、とっつぁんが、小便所(しょうべんじょ)から出てくると、
「ほうら、とっつぁん、ぼけものだぞう」
とゆうごうを、とっつぁんのところへ投げてやったと。そうしたら、とっつぁんは、
「ああ、化けものだ」
と言うてゆうごうをだいたまま、そこで気絶したとさ。
ほうして気がついたときには、ゆうごうをだいていたとさ。
そうしたら、かかさが、化けもんは、いんなゆうごうらというたと。とっつぁんは、
「化けもんは、いんなゆうごうだとしたら、おつゆのしんのみ(汁の実)のねえときは、いつも化けもんをおさえて、ゆうごうにしる」
というたとさ。
そうしてなあ、ある晩、一人で、ごうぎな、でっかいふろしきを持って、山の奥へ行ったと。
そうしたらなあ一つ目が目を光らせて出たと。
そうしたら、とっつぁんが、ごうぎなふろしきを広げて、
「なんだ、ばけもん、おれがふろしきで、くるっとつつんで家へ帰って、しんのみにして食ってやる」
といったんだと。
そうして、ばけもんを、でっけえ、ふろしきでつつんだあと。
ふろしきかずいていったら、だんだん重くなってきたらあと。
ほうして、あけて見たらいんな金(かね)らったらあっと。ほうしておくびょうもなおったらあと。
武石 高橋ミヤ
……もっと読んでみたい昔話