うん
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
むかし、あるとこに、びんぼうで、男の子が四人いる家があったと。
そこの家はお正月がくるというがんに、びんぼうで餅をつくこともできねえし、きものをきることもできなかったと。
歳取(としと)りの日になって、とっつぁん(父)がちっとばか銭(ぜん)を持って、小千谷(おっぢや)のような町へ、魚を買ってくると言って出かけたと。
ほうして、峠にかかると、お地蔵さんが雪にうたれていたと。
それを見て、町から笠を買ってきて、かぶせてやったと。
家に帰ると、かかさ(母)がそれを聞いてごうぎ怒ったと。
そうして、夕方になると
「ごめん、ごめん」
と声がして、人がたずねてきたと。
出て見ると、大きな男の人が男の子を一人連れてげんかんに立っていたと。
かかさはおこって、
「家に子どもが四人もいるがんに、ひとりふえれば五人になる、おごっだ」
と言ったと。男の人は
「この子はなかなか良い子で、この子に願えば、何でも出てくる。名前はうんという名前だからだいじにしなさい」
と言って帰ってしまったと。
そして、元日の朝になったと。
さあうんにお願いしようと願ったら、モチも出る、着物も出る、魚も出るで、おお喜びだったと。
うんは大変、いたずらっ子だったろも、願えば何でも出るんで、がまんしていたと。
だんだんしているうちに、けんかしておごとらんだんが、とうとうとうかかさがうんを殺してしまったと。
そうしたら、そこの家は、また、もとのびんぼうになったとさ。
七日町 渡辺セン
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