火伏せの地蔵
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
昔、二本柳(にほんやなぎ)に庄屋をしていたはばという家があって、そこで三十三年忌の法事をしるてがんで、蔵にあるものを家に運びこんで、いい法事したと。
そこの家に、ちいとあったかい(知恵おくれ)下男がいて、その日、こっぴどく家の人におこられたと。
ほうしたら、夜中に、その下男が腹たちまぎれに、はばの家へ火つけてしもうたと。
先祖からつたわった宝物もくるくるやけ(丸焼け)になってしもうたと。
その時、馬屋(まや)の馬も焼け死んでしもうて、はばの家は、それからびっぼうしだしたと。
つぐの朝、火事のあとかたづけしるとってきてみたら、小さい足跡がついていたてんがの。
「こらあふしぎ、なんで火事場へ、人の足跡なんかあるろう」
と村の人が、その足跡についていってみたら、村の人がまつってある地蔵様の堂の中にその足跡が消えたと。
「こらあ、おかしいなあ」
と思って、村の人が中へはいってみると、地蔵様の片目が、つぶれたように怪我していたてんがのう。
「はあ、そうせば、あの火事場で働いて、火を消して、他のところへ火がつかんようにしてくれたがんは、この地蔵様らったがんだなあ」
というて、その地蔵様のことを、火伏せの地蔵様というたと。
それから、火事よけの地蔵様というようになった。
その時、やけ死んだ馬が、あんまりかわいそうらてがっで、二本柳の土手に馬頭観音がたっているが、焼け死んだ馬の骨も埋めてたったということらの。
いきがすぽーんとさけた。
二本柳 竹部一郎
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