新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

じさまとまめ

新潟県長岡市小国町じっくり聞かせる昔話

じさまとまめ

新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。

むかしがあったてや。

あるろこへじさまとばさまがいて、ある日二人で座敷の掃除をしていたてや。

ほうしるとでっけえ豆が一つ、コロコロところび出たてや。ばさまあ喜んで、

「こらええかった、この豆炒って食おう」

と言うたてや。じさまあ、

「馬鹿言うんじゃねえ、この豆あ畑へまく、そうせや秋になれや一株とれる」

そう言うたと。ばさまあ、

「いやそうじゃねい、秋まれなんか待っていらんねい。どうれも今妙って食う」

「分からんばさまらな。今たっだ一つらろも秋んなれや、いっぺいんなるねか。この豆あどうれも畑へまく」

「いや妙って食う」

「いや、畑へまく」

そういうて二人でいさけ(争い)したてやの。さっざ、せりごう(争い)たろもきまらねんなんが、

「へえ、山へ行がんけやならね。この続きぁ山からあがってきてからしるすけ。それまでこの豆あ、おおべっさま(えびすさま)へ上げておく」

じさまそう言うて、でっけ豆を一升ますん中に入れて、神棚へ上げて山へ仕事に行ったてや。

さて後へ残ったばさまあ、でっけい豆食いたくて食いたくてどうしょうもね。

とうとう我慢しらんねで、おおべっさまからます下ろして、へんなかへ妙り鍋かけて、火どんどん焚いて、鍋ん中へ豆を入れてカラコロカラコロ、カラコロカラコロ妙って、カリカリン、カリカリンと食うたら、なじょんかうまかったと。

そのうちにへいる(昼食)になってじさまが山から帰って来て、

「ばさまばさま、あの豆どうしたい」

と聞いたんなんが、ばさま、

「あっ、あの豆か、さっきなコロコロところんで出て、そこのねずん穴(ネズミ穴)へころびこんでしもうとう」

そういてうっそ言うたと。じいさまたまげて、

「そらあもったいねいことした。どらどら、じゃおが探して来らあ」

そういうと袋一つたがいてねずん穴へ入って行ったと。

ほうしっと向うの方で何だやらにぎやかな声がしるてんがね。

何だろうと思うてそばへ寄ってみたら、ねずみが大勢集まって餅ついているがだと。

「百んなっても二百んなってもニャーニャーの声はやあらいやあ。アーヨイショヨイショ」

と唄を歌いながら餅ついているがだと。

じさまあ、こらあおもしい、一つかもうて(いたずらして)くっどと思うてそう、

「ニャーオン」

てねこの鳴き声をまねしたてや。

ほうしっとねずみあたまげて、チューチュー、ガヤガヤッといんな居ねなったてや。

「こらまあ可愛いそうなことしたぜい」

そう思いながら臼んのこへ行ってみたら、臼ん中は餅じゃなくて銭(ぜん)がいっぺい入っていたったてんがの。

「こらあよかった」

じさまその銭をいんな袋ん中へつめて、また穴ん中を歩(え)んで行ったと。

ほうしたらへえ晩方になってあたりが真っ暗んなってしもうたてんがね。

「さあ、おおごとら、日が暮れてしもうたが、どっか泊るろこあねいろか」

そう思うてあたり見まわしたら、向こうの方にチカンチカンと灯が見えるてんがね。

「あっよかった。あこへ家がある。一つ頼んで泊めてもろおうざ」

そう思うてその家のろこまでやってきたら、何だやらその家の中がにぎやからてんがね。

「はて、この家には何か取りこみがあるげらぜ」

じさまあ障子に穴あけて覗いてみたてや。

「うわーっ」

じさまあたまげてや、その家ん中にや赤鬼、青鬼、黄色い鬼らの黒い鬼が大勢集まって、

「ちょう」

「はん」

ていうて、ばくち打っているがだてんがの。じさまは、

「こらあ大変なろこへ来てしもうた。どうしたらいいろ」

とせつながった(つらかった)と。ほうしたら中の赤鬼が、

「おいおい早くはった(賭けろ)、はった。ぐずぐずぐずていると夜が明けるぞ」

そう言うていんなをせかしたてんがね。

「ハハァ、鬼どもは夜が明ければ帰るがだな」

じさまそう思ったんなんが、にゃ(作業所)へ行って箕一つめっけて来て、その箕をバタバタバタバタとたたいて、

「コケコッコー、夜が明けたーっ」

と鶏(とり)のまねをしたてや。ほうしっと鬼どもあたまげて、

「ほーら夜が明けた。逃げれ逃げれい」

てがっで大騒ぎになり、銭をいんな置きっぱなしにしてどっかへ逃げて行ってしもうたてや。じさまはまたその銭いんな集めて袋ん中へ入れて、ほんとに夜があけるがん待って、もと来た穴の道を帰ってきたてや。

家じゃばさまがへんなかで火焚きながら、

「あのまあ、ばかじさま、どこへ行ったがだろう。豆なんかおが食うたがんも知らんで、ねずん穴へ豆さがしに行って、とうとうよっべな帰らんかった。どこほっつきさいで(歩きまわって)いるがだやら、あのばかじさま」

ブツブツとじさまのざっぞう(悪口)しながら火焚いていると、けつの下がモクンモクンと持ち上がるてんがね。

「ヤーヤーこらもっくらもちが出たげら」

ばさま、にゃから横槌(よこづち)を持って来て、

「もっくらもちあどごへ行った。そこらへ居たらかっつぶせ」

そう言いながら横槌でズゴンズゴンと叩きつけたてや。

ほうしたらモクンモクンしるがんが、おさまったんなんが、縁(えん)まくって見たら、何とじさまが銭いっぺい入った袋をかずいて死んでいたってや。

ばさあ切ながって、

「じさまーかんべんしてくんねか、おれがいっちわるいがだすけ、かんべんしてくんねか」

そう言うてオイオイオイオイ泣いたと。

これでいきがスポーンとさけた。

法坂 山崎正治

おはなし

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