新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

べと舟と杉舟

新潟県長岡市小国町楽しい越後の昔話

べと舟と杉舟

新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。

とんと昔があったっつお。

爺(じ)さまと婆(ば)さまがいたてや。

爺さまは婆さまに、

「今日は、日和がいいすけ、山へかや刈りにいってくるすけ、なあ家にいてこめついてくれや」

というて、山へかやかりにいったと。

爺さまは、毎日弁当持って山へ行ぐろも、山のたぬきが来て、弁当盗んじゃ食っていたがだと。

その日もたぬきが爺さまのまんま食おうと思うても、いつものどこへ弁当がないんだんが、爺さまに知らんふりして、

「お前、今日は、なんの仕事しやるい」

と聞いたと。爺さまは、

「おらあ、今日はかや刈りに来たうも、弁当どうろ持ってきたすけ、なあがあいほ(手伝い)してくれれば半分くれるぜ」

というたら、たぬきが、

「じゃ、おがあいほしるすけ、半分くんねか」

というて、爺さまに負けねで、かやどうろ刈ったと。

「さあ、まんまにしようじゃ」

と爺さまがいうんだんが、たぬきは爺さまと、弁当どうろ食ったと。

まんま食ったら二人して、刈ったかやをかずいて家へへあがる(昼上がり)に帰ったと。

爺さまは、心の中じゃ

「このたぬきがいつもおが弁当食っているがだ。今日くっさ(こそ)、つかめてたぬき汁にしてくれようじゃ」

と思うていただと。そこで爺さは、

「さあ、なあ先になっていってくれや」

というて、たぬきを先にしたと。ほうして爺さまは、

「家まで遠いみちだすけ、一服しょうざ」

というて、火打ちでカチンカチンと火をつけたと。ほうしたらたぬきが、

「爺さ爺さ、カチン、カチンという音はなんですい」

というたんだんが、爺さまは、

「あれは奥山のカチカチ鳥だ」

というがんだと。そのうちに、ぼうぼうと音がするんだんが、

「爺さ、爺さ、あのぼうぼうというのは、何ですい」

と聞くんだんが、爺さまは、

「あれは奥山のぼうぼう鳥だ」

というていたと。

そのうちに峠へ行くころは、ぼんぼん燃えて来て、背中の毛いんな燃やして、ごうぎなやけどをしたと。爺さまは、

「さあさあ、いっときかや降ろしたがいい、おが薬をつけてくれるすけ」

というて、たぬきになんばんの粉のびりびりするがんを塗ってくれたと。

たぬきは苦しくて、苦しくて息がとまるほどだったと。

そっでもまだ死まねんだんが、爺さまは、

「こっでもまだ死まねえ。こらあかやどこの騒ぎじゃだめら」

と思うて、四つ足縛って家へ連れていったと。

「婆さま、今来たぞ。山のたぬきつかめて、庭の枝にいつけておくすけ、縄ふるくなや」

というて、木にさげておいたと。

婆さまは、爺さまに、へえる食わして山へやったと。

爺さまが山へ着いた頃、家じゃ、たぬきが

「婆さま、苦しくて苦しくてどうしょうもねすけ、この縄ふるえて(解いて)くっねか」

とたのむがだと。だろも婆さまは、

「爺さまにおこられっとおごとだすけ、ふるかんねえ」

というて、こめ搗きしていたと。

そのうちに、たぬきは、てめえであたけたって(自分で激しく動いて)、縄ふるいて、

「婆さま、なんで俺があっげにたのむがんにふるいてくんねがだ」

というて、婆さまの持っていた杵をしったくって取って、婆さまの頭を、こっきん、こっきんとはたきたって、殺してしもうたと。

その骨をどうしたらよかろうと思うて、ながしの縁の下へ隠しておいたと。

婆さまののがした着物は、いんな(みんな)自分で着て、婆さまのかっこうでこめ搗いたと。

そこへ爺さまが来て、

「婆さま、今来たぞ」

というたら、婆さまは、

「ごくろうであったのう」

というだろも、その声がいつもの声と違うがだと。

「これはおかしい」

と爺さまが、庭の枝を見だら、たぬきがいねがだと。爺さまは、

「今の声は、婆さまの声色(こわいろ)だねか」

と思うて、家の中へはいってみたら、たぬきが

「爺さま、おれは婆さ食った。流しの下の骨みろ」

というて、家から出へ逃げていったと。

爺さまが流しの下を見たら、そこに婆さまの骨だけあったと。

爺さまは、くやしくておいおい泣いていたと。

そこへうさぎが来て、

「爺さ、爺さ、おめえ、なんの泣きやるい」

と聞いたと。爺さは、

「山のたぬきが、毎日おが山へ持っていく弁当食うんだんが、つかめてたぬき汁にしようと枝に縛っておいたら、縄ふるいて、おらこの婆さを食ってしもうたんだんが、泣いているがっだ」

というたと。うさぎは、

「じぁ、いっこうおが仇をうってくれるすけ、泣きやるな」

というたと。爺さは、

「ありがてえ、ありがてえ」

と涙流したと。

「爺さま、おめえ木があったろい。木切らっしゃい。そっで舟作れ、おれにいい考えがあるすけ」

ほうして、爺さまは、その木切って、舟作る。

うさぎは、とうど(手伝い)に来てくれたと。杉の舟一隻(せき)こしょて

「こっだ、べと舟作るすけ、あいほしてくんねか」

と爺さまにいうて、うさぎはべと舟作ったと。

「爺さま、こっで二隻の舟ができあがったが、べと舟はたぬきののる舟だし、杉舟は、お前とおれが乗る舟らぜ」

うさぎは、こういうて、たぬきに

「日和がいいすけ、海へ遊びにいこうねか」

とさそったら、たぬきも喜んで一緒にいぐがんになったと。

ほうして、初めは、いんなが杉舟にのっていたろも、沖へ出てから、たぬきをべと舟にのして、

「杉舟はぷいっとせい、べと舟はかっくらせ」

と唄って、かい棒でこきんこきんとべと舟をたたきつけたと。

ほうしたら、べと舟は、がぼがぼともぐってしもうて、たぬきはせつながったろも、下の方へぐんぐん流れていってしもうたと。

これでいきがすぽーんとさけた。

上岩田 木原カノ

おはなし

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