新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

ほら貝の聟

新潟県長岡市小国町解説と話し手紹介

ほら貝の聟

新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。

とんと昔があったげろ。

じさとばさが住んでいたろも、子供がなかったと。

ばさは、

「じさじさ、鎮守様へ二十一日の願掛けして、子供授けてもらおうねか」

というたと。じさまも、

「そらそら、じゃそうしろう」

というて、次の日から二人して、お宮参りにいったげろ。

二十一日目の朝方、ばさが目覚まして、じさに、

「今、神様の夢じらしか、お宮の奥の院の縁の下に、小さい、ほらっけい(ほら貝)がいるすけ、家へ持っていって、子供らど思うて、大事に育てろといわれたぜや」

というたと。じさは、

「じゃ、早いってもらってこう」

というて、二人でお参りして、縁の下見たら、ほらの貝がひとつめっかつた。

ほうして家へつれて来て、藁のっぐらつくって、子供らと思うて、毎日毎日まんま食わしていたと。

ある時ばさが、

「お前が子供だったら、町へ使いに出して、苧(お)でも買うて来て、もらうのだろも、それもだめらしなあ」

というたと。ほうしたら、ほらの貝が、

「おが行って買うて来うかい」

というたと。ばさまは、たまげたろも、

「こうてこられるようだけや、そうしょか」

というて、銭をふろしきに包んで、かずかして(背負わせて)やったと。

ほらの貝は、ずるんずるんとそれをひきずって、町へ出ていったと。

じさとばさは、どうだろうかなあと思って、心配していたと。

そのうちに、むこうの方から、ほらの貝がくるのがみえて、

「今きたぜ」

というて、苧かずいてきたんだんが二人は、なじょんかたまげたと。ほうして、

「よした、よした」

とほめたと。

それからまたちょっとめてから、ほらの貝が、

「おら、こんだ嫁もらうてくるすけ、着物(きもん)とはおりと、はかまを何尺何寸のたけにこしょうて、そんに、風呂たいてまっていてくんねか」

というたと。

ばさは、こんげのほらの貝が着られるか、着らんねかわからんうも、いうたとおり、こしらっておこかというて、着物こしらっておいたと。

ほらの貝は、町へいって、金沢(かなざ)の旦那さま(※小国町金沢の旧家、山口家)のような家の玄関にたって、

「ごめん下さい。ごめん下さい」

というと、中からおんなご(下女)が出てきて、あたりみるろも、だれもいないふうらん(いないらしい)だんが、家の中へもどろうとすると、また、

「ごめん下さい」

というんだが、よく見てみたら、ほらの貝がいたと。

「ほらの貝おまえかい、ごめん下さいというたのは」

とおんなごがきくと、ほらの貝は

「はい、そうです」と答え

「まあ、口をきくほらの貝がきている」

というて、おんなごは、奥の方へいったと。旦那さまが、

「もってきてみれ」

というんだんが、家へもってはいると、みんなが珍らしがって家中のものが集まってきたと。

奥からお嬢さんも出てきて、

「まあ、ほらの貝が口をきくとね。どれ、かわいいこと、わたしの手の上へのせてみせて」

というたと。

おんなごが、お嬢さんの手の上に、ほらの貝をのせてやると、ほらの貝が、お嬢さんのほっぺたにぴょんとくっついたと。お嬢さんが

「いたい、いたい」

と大さわぎになってしもうたと。

「だれかとってくれ」

というろも、だれもとってくれらんねえで、困っていたと。おっかさまが、

「まあ、ほらの貝、おまえの好きながんやるが、離れてくんねか」

と頼んだと。

ほうしたら、ほらの貝が、

「このお嬢さんを、おが嫁にしてくれれや離れる」

というたと。

「こらあ困ったことになった」

と旦那さまとおっかさまも思ったろも、どうすることもできねんだんが、

「まあ、しかたがねえこてや」

というたら、ほらの貝がぼとんと落ったと。ほらの貝は、

「じゃ、嫁にもらっていきます」

というだんが、お嬢さまの家じゃ嫁入り仕度をして、真っ赤のきもんきせて、お嬢さまをかごにのせ、ほらの貝もかごにのせたと。

おとっつぁまとおっかさまも送って、荷かづきが大勢(おおぜ)、みんな長い行列つくって、ほらの貝の家へ来たと。

「じさ、ばあ、いまきたぜ」

というて、ほらの貝がはいってゆくと、じさ、ばさは、とんででてみて、

「まあ、こればっかしゃ、こればっかしゃ(これは、これは)」

と嬉しくて家中とんであいたと。

いんな(みんな)から帰ってもらったら、ほらの貝が、

「おら、ふろへはいってくるすけ、おがふろにはいったら、ふたしてくんねか」

とたのんだど、ばさが、ふろのふたをしると、中でことことことことどぼんと音がして、

「ふろのふたあけて下さい」

というので、ふたあけてみたら、きれいで、背の高い美男子(びだんし)があがってきて、

「さあ、着物きして下さい」

というたと。

神のもうし子だんだんが、用意していたはおり、はかまも寸法がぴたっとあったと。

それを着て、みなさんの前へあいさつに出たら、みんながなじょんかたまげたと。

新郎、新婦を並べて、お祝いの酒もりして、みんながよろこんだと。

二人は、親孝行して、たのしく一生暮らしたと。

いきが、ぽーんときれた。

苔野島 粕川クラ

おはなし

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