新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。
うり姫とあまんじゃく
あったてんがの。
むかしあるどこへ子持たずのじいさとばあさがいたっての。
二人は何とかして子供が一人欲しいもんだと村のお宮に願をかけたってんがの。じいさは、
「三・七 二十一日の三週間大好きなたばこをやめる。ばあさはやっぱり三週間お茶を飲まんことにするすけ、どうか子供を一人授けてくんなさい。」
と、毎日毎日お参りに行っていたってんがの。そうして三週間の満願の日にお参りに行ったらいつもはなかった何かの種が一つ落っていたっけての。ばあさが見つけて
「ちょうど満願の日に種を見っけたんが拾うて行って蒔いてみよねかの。」
と、言うて家の庭へ蒔いて毎日水をやっていたっての。
二・三日したら芽が出てずんずん伸びてゆくってんがの。
そうして花がいっぺいこと咲いたと思うたら、うりがいっぺいことなったてんがの。
その中の一つのうりがばっかでっこうて、ある日の朝ばあさが見たらうりの尻の方がちっとばか割れているってんがの
「じいさま、じいさま、あのでっこいうりが割れそうげだが、もいでみてくんなさい。」
と、言うんだんがじいさがはさみ持ってきてパチンと切ったっての。
ばあさはしっかんかんと抱いて家へ持って入ってそこへ転がしたら、うりがひとりでに割れて中から女の子が生まれたってんがの。
二人は喜んでうりから生れた子だすけうり姫という名前をつけたっての。
うり姫は毎日毎日乳をいっぺいこと飲んでまんまも食うようになってたちまち可愛げな娘になったてんがの。
そうしてばあさからはた織を習うて上手になって毎日トントンカラリとはたを織っていたっての。
そのことを聞いた隣りの村の旦那様の息子が嫁にもらいたいと言うてきたっての。
じいさもばあさもやっと授かった娘だどもいいらみとの貧乏人のどこへいるより若旦那の嫁になった方が幸せだろうというて嫁にやることにしたってんがの。
そうしていくら貧乏でも嫁に行ぐ時はきれいの着物を着せてやろうやと思うて町へ着物買いに行くことにしたっての。
「うり姫やおいら二人して町へ行ってくるすけ、んなあまんじゃくが来たっても絶対に戸を開けるなや。」
と、言うてでかけて行ったっての。
そうしたらやっぱりあまんじゃくが来たっての。
「うり姫や遊ぼういや。」
「おらはた織りしんばねすけ遊ばんねえや。」
と、言うとあまんじゃくは
「手が入るほど戸を開けてくんろ。」と、言うってんがの。
「だめだいや、じいさまとばあさまが絶対かけんなと言うたがいや。」と、言うと
「指が入るほどあけてくんろ。」
と、又言うがだっての。
いくら「だめだ、だめだ。」と言うても開けてくればっか言うすけ、とうとうちっとばか戸を開けてくいったての。
そうしたらあまんじゃくが爪を立てて戸をガラッとあけてしもうてうり姫のことをぶったたいて食ってしもうて、てまえがうり姫に化けてうり姫の着物をきてはた織りしていたってんがの。
だどもいっこうトントンカラリと聞こえんでガタガタピッシャンと聞こえるってんがの。
丁度じいさとばあさが帰ってきたらトンビが空で
「うり姫のおるはたをあまんじゃくが織ったげだ。ピヒャラヒャラヒャラ。」
と、鳴いてるがんだとの。
「はぁてな。トンビがおかしげな歌をうとうているな。」
と、じいさは思うていたってんがの。
そうして次の日、買ってきたきれいな着物をあまんじゃくが化けたうり姫に着せていたどこへ旦那様の家から嫁を迎えるおかごが来たってんがの。
そいであまんじゃくを乗せて、じいさとばあさも後からついて行ったっての。
そうしたら又、トンビが空をとんでいたっけが、
「うり姫が乗るかごにあまんじゃくがのったげだピィヒャピヒャラ。」
と、鳴くってんがの。じいさまが
「はぁてな、又トンビがおかしな歌をうとうているが、うり姫に何かあったがでないろかな。」
と、思うておかごの人にちっとばか待ってもろて
「おかごの中を見てくんなさい。」と言うてみんなして見たらやっぱりあまんじゃくが正体を現わして毛もくじゃらの手や足を投げ出してグースカグースカ寝っているがんだってんがの。そいでたまげて
「このあまんじゃく奴が…!」
と、引きずり出してぶったたいて殺して血だらまっかになったのをチガヤの根っこのどこへ、ほげ投げたっての。
それで今でもチガヤの根っこはまっ赤のがんだっての。
いちごポーンとさけた。
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