新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

どっこいしょ

富川蝶子の昔話

新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。

どっこいしょ

あったてんがの。

むかしあるどこへ貧乏のかっかとあんにゃがいたっての。

稲刈もおえたし、あんにゃが孫ばさまの家へ遊びに行ったてんがの。ばさまは喜んで

「あんにゃ、あんにゃ、よう来てくいた。ちょうど今おれがうまいもんこしょうていたどこだいや。いっぱいこと食ってくれない。」

と、言うて団子を出してくれたっての。

あんにゃは、はじめて見たってんがの。

「ばあばあ、これはいったい何というもんだい。ばっかうまいもんだのし。」

と、きいたっての。ばさまはたまげて

「んなはまあ、こんげんもんでも食ったことがないがだかや。可哀相げだない。これは団子とゆうもんだど。いっぺこと食いや。」

と、言うたっての。

めぐらにあんこがついていてばっかうまいんだんが、あんにゃは喜んでこんだかっかにこしょうてもらわんばんなと思いながら食っていたってんがの。

そうして晩がたになったすけ

「ばあばあ団子はうまかったで。また来るすけのし。」

と、じゅんぎを言うて帰りしなに、

「おれは、頭が悪れいすけ団子を忘れると大ごとだんが道道言いながら行がんばな」と考えて

「だんご、だんご、だんご、だんご。」

と、言いながらあいんで来たっての。

そうして家の近ままで来たらでっこい水たまりがあるってんがない。そいであんにゃは

「どっこいしょ。」

と、言うてまたいだってんがの。

ほうしたらへえ団子を忘れて

「どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ。」

と、言いはねたってんがの。

そうして家へとび込んで

「かっかぁ、今来たで。ばあばがのし、ばっかうめいどっこいしょってもん、こしょうてくいらいたで。こんだおまいもこしょうてくれいし。」

と、言うたっての。かっかあがたまげて

「なんだってい。どっこいしょなんて何のこんだや。おら見たことがないど、このばか者が。」

と言うてあんにゃを押し返らがしたってんがの。

あんにゃはそばにあった柱にごっつんとぶつかったっての。

「イテテイテッ。痛いねかし。」

と、言うてあんにゃが額をなでているうちに団子みとうのこぶたんが出来たってんがの。

それを見てかっかあが

「あいやあ。なじょんしょうがない。だんごみとのこぶが出来たねか。」

と、言うたとの。

そうしたらあんにゃがてまえのひざっかぶをパチンとたゝいて

「あぁあ、やっとわかったいし。そのだんごとゆうもんだいし。」

と、言うたってんがの。

いちごポーンとさけた。

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