新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。
サルの生きキモ
あったてんがの。
むかしあるどこに竜宮浄土ってどこがあったてんがの。そこの姫さまが病気になられて、あっちこっちの医者に診てもろうてもいっこうようならんてんがの。
ほうしてこんだうらない師にみてもろたれば、
「この病気は陸にいるサルの生きキモを飲めば治る。」と、言われたと。
それで誰か陸へ行ってサルをつれてこいと言うことになってサルをのせるには亀がいっちよかろうでの、亀が選ばれたっての。
そいで亀が選ばれたからにはどうしてもサルをたらかせて、つれて来んばねと陸をめがけてバタバタと泳いで行ったってんがの。
そうしたら運よく陸へ上ったらすぐにその辺にサルがいっぺいこといたっての。それで亀はしめしめと思うて、
「オイ!サルどんサルどん、おれの背中にのってみねえかの、ばっかあもしいどこへ連れて行ぐすけ。」というたら
「うまいものを食わせるか。」「いい女がいるか。」なんて口々に言うていたっけが一匹のサルがひょこんと亀の背中にのったてんがの。
一匹つれて行けばいいがんだすけ亀はすぐ泳ぎ出して竜宮じょう土へ着いたってんがの。
さあみんなで喜んでサルにうまいごっつおを出してくれたり酒を飲ませたりしていたっての。
サルは毎日毎日うまい物を食ったりのんだりしては喜んでいたっけが、ある日、いい天気だし外へ出て日向ぼっこをしていたっての。丁度、海ばたでクラゲが泳いでいたっけが、
「サルのバカが、今に生きギモを抜かれるがもしらんで喜んでいらや。」なんて言うてしゃべっていたってんがの。
さるはそれを聞いて、
「ああ、そうか。道理でばっか大事にしてくいるがだな。」
と、思って何とかしてここから逃げんばんと考えていたっけが二、三日したら雨が降りそうにおかしな天気になっての。そんどきサルは外へ出てでっこい声出して
「ああ困った、困ったな。」と、言うたと。
亀がそこへ来て「サルどん何がそんげん困ったがだ。困ったことがあったら何でも言うてみてくれや。」と言うがんだと。サルは泣きだしそうな顔して
「オラ大事な生きギモを松の枝に干してきてしもうたがんに、雨が降りそうになってきたが、はよ行ってとり込まんば何の役にも立たんなる。」
と、言うたと。亀はたまげて
「何てこんだ。このサル、あんげごっつお食わしたり飲ましたりしているがんに生きギモを持っていないなんて、早く行ってとり込んでとらせんばならん。」
そうみんなに言うて、また亀はサルを背中にのせて陸へ行ったっての。サルが、
「ああ、この松の木だ。」とするすると登って行っていっこうおりてこないってんがの。亀がしびれをきらして
「オーイ、サルどんはよおりて来てくらっしゃい。雨が降りそうだかねえ。」と言うたら
「オーイ、カメカメ、サルの生きギモってはちゃんと体の中へ入っていてない。取ったり入れたり干したりなんかしらんねもんだ。」と、言うて大笑いしているってんだの。
亀はくやしがって帰ってきて誰がサルのキモを取るなんてサルに聞かせたと調べてみたらクラゲがしゃべったってことがわかってクラゲはみんなにぶったたかれて、それでいまのように骨無しになったがだってこんだれの。
これでいちごポーンとさけた。
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