新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。
お天道様 かねのくさり
あったてんがの。
むかしむかしあるどこへ男っ子三人持った母あちゃんが病気で死んでしもうたっての。
そいで父ちゃんが後家どんをもろうたってんがの。
そうして、父ちゃんは町へ泊りがけで働きに出かけたっての。
ある日のこと一番小んこい子を一人家へ残して上の子が二人で遊びに行ったっての。
よっぱら遊んで
「へえ家へ帰ろいや。」
と、言うて二人で帰ってきたら、後家どんも小んこい子もいないってんがの。
どこへ行ったろと思うていたら何だか奥の部屋でガサガサゴソゴソと音がするがんだっての。
そいで二人がそろっと戸をちっとばかあけて見たら後家どんがその小んこい子をガリガリボリボリと食っているがんだってんがの。
二人はたまげて外へ逃げ出したっての。そうしたら後家どんが
「こらあ、ねぇらみたなぁ。ねぇらもみんな食ってしもうど。」
と、言うて追いかけて来たっての。
二人は捕まったら食われてしもう、食われたらおしまいだと、お庭の池のそばにあるでっこい木に登ったってんがの。
後家どんがそこらをキョロキョロ見ながら探していたら男っ子の姿が池にうつっているってんがの。
「やろう。木に登っていやがったな。どうやってそこ迄登ったがだ。」
と、ゆうんだんがでっこい方の子が
「木に油をぬって登ったがんだ。」と聞かせたっての。
そうしたら後家どんも油持ってきて木に登ろうとするども、つるんつるんとすべっていっこう登らんねっての。
「やろうども、うそ言うているな。すべって登らんねねか。どうやって登った。本当のこと言え。」と、どなるんだが、下の子が
「なたで木に傷をつけてそこへ足を引っかけて登ればのぼらいるで。」
と、本当のこと言うてしもうたってんがの。
こんだ後家どんは小屋からなたを持ってきてガシンガシンと傷をつけながら登ってくるってんがの。
二人の子供は食われたら大変だとゆうて、
「お天道様、助けてくんなさい。」と、でっこい声で言うたと。
そうしたら天上からカラカラカラとかねのくさりがおりてきたっての。
二人はそのくさりにつかまったら、誰かがするするっとくさりを引っぱり上げてくいたっての。
こんだ後家どんも大声で「おうい。天道様や、おれにもくさりおろしてくれいやぁ。」とどなったっての。
そうしたら、ぐわらぐわらっと錆びたくさりがおりてきたってんがの。
「ようし、ねぇら、どこまで行ったってぼっかけて行って食ってしもうど。」
と言うて後家どんがくさりにつかまったてんが、さびてるくさりだすけ、がっちゃんと切れてどっさんと落ってそのまんま死んでしもうたってんがの。
そうしたら男っ子がつかまっていたくさりがするするとおりてきて二人は助かって、父ちゃんも帰って来て三人で仲良く暮したってんがの。
いちごポーンとさけた。
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