新潟県見附市の富川蝶子さんの昔話。その端正な語り口調を知ると、文字が生き生きと語り始めます。ぜひ一度CDでむかしばなしをお聴きください。
グツとバタ
あったてんがの。
むかしあるどこへグツという子とバタという子がいたっての。
母ちゃんは三年前に死んで父ちゃんと三人で暮していたってんがの。ある日のこと
「今日は、母ちゃんの三年忌の命日だすけおれがお寺へ行って和尚さんにお経読みに来てくんなさいと頼んでくるすけグツはまんま焚いておけ。バタは焚き物拾ってきて、せぶろ湧かしておけや。」
と、言うてお寺へ行かれたってんがない。
そいでグツは米をといでまんま焚いていたって。
バタは裏山へ焚物拾いに行ったと。
グツが火焚いているとまんまが煮えたってきてグツバタグツバタといいはねたってんがない。
グツはてまえ方のことを呼ばっているなと思って
「あゝ。グツは火焚きしているしバタは山へ行ったいや。」
と、言うたと。だどもまだグツバタグツバタいうてるんだんが
「ああああ、なんしたてや。はよ用事ゆいや。」
と、言うどもまだやめないんだんが、グツは怒って
「いい、こやかましい、黙れ。」
と、言うて釜のふたを取って火のはたの灰をひとつかみ投げこんだってや。丁度そこへ父ちゃんが帰ってきて
「行って来たど。グツやまんまはできたか。」
ときいたってんがない。
「いいや。おれが火焚きしていると、グツバタグツバタとおいらのことばっか呼ばっているすけ今灰投げこんで黙らしたどこだれ。」
と、言うんだんが父ちゃんたまげて、ふたを取ってみたっての
「あっきゃあ、こんげんきったんしてしもうて和尚様になんて食てもらわんねこてや。俺が二階に甘酒作ってたすけ、そうせや甘酒でも飲んでもろうこてや。かめをおろすすけ、んなけつをおさえていれ。」
「アーイ。」父ちゃんは、二階へ行って
「グツや、ほらしっかりけつおさえていれ。」
「アーイ。」
「いいかはなすど。」
「アーイ。」
それで父ちゃんはかめをはなしたってんがの。そうしたらガッチャーンとかめが落ちてぼっこれて甘酒がダーッとそこらへ流れてしもうたっての。
「グツ、んな何しているや。あんげんしっかんかんとおさえていれというたがんに。」
と、言うたらグツは
「おら、こんげんしっかんかんとおさえているねかの。」
と、言うってがの。
てまえのけつをしっかりおさえていたがんだっての。
さあて父ちゃん困ってしもうた。
まんまはだめにした。甘酒もだめだばどうしようばや。せぶろへでも入ってもろうと
「バタ焚物拾うて来たか。はよせぶろわかせ。」
「アーイ。さっきなから火焚きしていたれ。」
と、グツが言うたと。
そこへ和尚様が来らいてお経を読んでくんなしたと。父ちゃんが
「和尚様ありがたかったでの。まんま食てもろうと思っていたどもグツはバカでまんまだめにしてしもうて、甘酒飲んでもろうと思えばこの通りかめがぼっこれてしもうし、バタにせぶろわかさせておいたすけ入ってくんなさい。」と、言うたと。
「そうか、そうか、どうしようばや。そうせばバタやせぶろわいたかや。」
と、和尚さんが言われるすけバタは見に行ったての。
風呂っては上の方からわいてくるすけ、よう、かんもさんばねってがんにバタは、ちょこんと手をつっ込んだばっかで、あったけすけ
「わいたいの。入ってくんなさい。」
和尚さんが入ってみたら、まだ下の方がわいてないってんがの。
「バタや、まだぬるいど。はよもっとくべてくれや。」と、言うたら
「あっきゃ、へぇ焚きもんがねぇでの。」と、言うってんがの。和尚さんが、
「焚きもんがないっけば、何でもいいよや。そこらにある、がすもくでも何でもんーなくべれ。」
と、言われるって。
バタは「ハーイ。」と言うたっけが脱いでおかいた和尚様の着物からふんどしまでみんな燃してしもうたってんがの。
「おお、へぇいい湯になったど。よしたよした。」
なんか言うて和尚様が上らしたとの。そこへ脱いでおいた着もんがないってんがの。
「バタや、バタ。んな俺の着物どこへやったや。」
と、聞かっしゃるっての。バタは、
「あっきゃ、焚きもんがねぇと言うたら、そこらへある物何でもいいすけくべれと言わしたんだんが、おら、んーなくべて燃やしてしもうたがの。」
と、言うたと。
和尚さまはへぇおおめに合うてチンポコおさえてとんで帰って行かしたっての。
これでいちごポーンとさけた。
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